恋し浜ホタテ 解体ワークショップ&生産現場フィールドワーク【とうほく食べる学校レポート】

とうほく食べる学校、第1期のテーマは「海」。東京でのワークショップと、東北の生産現場フィールドワークを経て、これからの食べかたや生きかたを舌と体で感じ学んでいきます。8月は、岩手県大船渡市の小石浜で生産される「恋し浜ホタテ」をピックアップし、ワークショップとフィールドワークを開催しました。

■ 恋し浜ホタテをみんなで美味しく解体するワークショップ

8月20日に東京の都電テーブル向原店で、東北食べる通信2014年4月号で特集した岩手県大船渡市小石浜の「恋し浜ホタテ」を解体するワークショップを開催しました。

会の前半は、生産現場や生産者たちを何度も訪れている、とうほく食べる学校オーガナイザーの山下より、恋し浜ホタテの生産現場や漁師たちの取り組みについて講義をおこないました。恋し浜の漁師たちが、先人たちの「量を減らし、質を上げる」姿勢を受け継いできた歴史や、消費者との交流を日頃から大切にしていること。新鮮で甘い恋し浜ホタテを東京で食べられる理由などを学んでもらいました。

講義のあとは、前日水揚げしたばかりの“活きた”恋し浜ホタテを解体するワークショップ。オーガナイザーの黒田の指導のもと、一人ひとつずつホタテむき専用のヘラを持ち、ホタテを観察しながら、殻から身を剥がしていきました。心臓、肝臓、エラ、ヒモ、精巣や卵巣など部位ごとに解体し、貝柱しか見た(食べた)ことない参加者からは感嘆の声があがっていました。

さばいた後は、都電テーブルさんご協力のもと、刺し身、フライ、天ぷら、煮付けなど様々な食べ方で堪能。頭も舌も恋し浜ホタテに染まった時間でした。

☆参加者の声
「恋し浜のホタテを取り扱っている綾里漁協は、被災前から消費者の方と結びつきを作る取り組みがあり、被災した際に驚くほどの寄付が集まり、公的支援を待たずして漁業が再開できた!これは素敵な事例だ!」
「ただ美味しい会じゃなくて構造やら生産者さんの声だとか、そのホタテについての講義を受けられるのでより一層美味しさも増すし、ありがたみも増します。」
「生きてるホタテを解体したんですが、本当に生きてるから、貝が閉じちゃう!!凄まじい生命力、感じました。」

■ 生産現場フィールドワーク@恋し浜

8月26〜27日に岩手県大船渡市の小石浜(恋し浜)で、恋し浜ホタテの生産現場を体感するフィールドワークを開催。東京から3名、愛知から1名が参加しました。

今回「先生」を務めるのは、恋し浜ホタテを生産し、集落のリーダー的存在である漁師・佐々木淳さん。参加者たちは、恋し浜駅を降りてすぐの「ホタテデッキ」にて佐々木さんより、生産方法や歴史について講義を受けました。漁業の話ではありますが、「独り勝ちではなく皆でいいものを作り、皆が幸せになる」という、小さな集落が生き残るうえで大切なことをお話してくださり、参加者たちも示唆を得たようでした。

講義の後は、さっそく佐々木淳さんの船に乗り、ホタテ養殖施設を見学。といっても、船の上から眺めるのではなく、地元のダイビングショップ「リアス」さんご協力のもと、シュノーケリングで海中から養殖を観察しました。ワークショップのときに見たホタテとは違い、ホヤやムール貝など様々な生物が貝殻に付着しています。参加者のほとんどがシュノーケリング初体験でしたが、この日は波もなく天気もよかったため、生きているホタテを思う存分体感することができました。

海から上がったあとは、夕暮れの漁港でBBQ。シュノーケリングの間に佐々木さんが水揚げしたホタテを刺し身にしたり、焼きにしたり。また、佐々木さんが仕掛けで獲ったアイナメを塩焼きにして食べました。ほんの寸前まで生きていた海の幸たちが次々にふるまわれ、とても贅沢な時間でした。

BBQ後は佐々木さんと一緒に近くの温泉に行き、21時過ぎに就寝。そして、1時半に起床。いよいよこのフィールドワークのクライマックスである「漁の同行」の時間がやってきました。参加者たちは普段ならいつも寝ている、もしくは寝床に入ろうとしている時間に起きて、仕事(漁)に行くという、それだけでも新鮮な体験だったようです。

2時に佐々木さんの船に乗ってホタテ養殖施設へ。少し遠くに他の船たちの灯りが見えますが、辺りは真っ暗でした。上を見上げると、一面の星空。東京や街の中では決してお目にかかれない光景に参加者たちは息を呑んでいました。

漁場につくと、佐々木さんは黙々とホタテが吊られたロープを船の上に揚げていきます。ホタテには、雑物(ざつぶつ)と呼ばれる他の生物たちがたくさん付着しています。そのホタテを佐々木さん指導のもと、参加者たちはナタを使ってキレイにしていきました(雑物落とし)。およそ2時間、ときおり雑談を交わしながらも、参加者たちは交代しながらせっせと作業をしていました。最初は飛び散る海水を気にしている人もいましたが、いつの間にか乗組員のように自ら動いて作業を手伝っていました。

水揚げを終え、漁港に戻ると、佐々木さんのお母さんや地元の女性たちがたくさん駆けつけていました。ここからはプロの技が要される、最終の雑物落としや出荷作業です。参加者たちは周りで、小石浜の人たちが共同して作業に取り組む姿を見学しました。

これにて全行程終了。佐々木さんたちに御礼を言い、朝焼けをバックに恋し浜をあとにしました。

参加者の声
「目の前でホタテやら魚やらさばいてくださるんですが、かっこいいんです!淳さんホタテの殻でホタテを剥くし、切るし!!めちゃめちゃ感動しまくりでした。」
「早起きすれば気軽に東北に行けることが分かったのも大きな収穫!気軽に行こうと思えば気軽に行けるもんだ。」
「陸の上の淳さん(漁師さん)はフレンドリーで、優しいけれども海に出たら違う。海を見る目が違うんです。キリッと落ち着いていてかつキラキラしてるんです。」
「生きてる状態が1だとして、死んでる状態が0で、海で泳いでいる生物は1、いつもスーパーで売られている食材を0という定義で言うと、この2日、0.5のものを何度も食べてきました。すごく気持ち悪い感覚だった。それはいつも0のものを食べることに慣れているから。生命を感じない死んだものを食べているから。加工品という食べ物を口にしているから。でも本来は0.5を常に感じるのが人間だったんだよな、、と思い、複雑かつ当たり前のことを衝撃的なほど感覚から教えてもらいました。」

■ 次回予告

山形県鶴岡市で生産される「庄内おばこサワラ」(日本一高いサワラ)をピックアップし、ワークショップとフィールドワークを開催します。キーワードは「持続可能な漁業」です。

◎ワークショップ
日時:2017年10月1日(日)11:00〜14:00(受付10:45〜)
場所:都電テーブル 向原店(Googleマップ)
住所:東京都豊島区東池袋2-6-2 ロイヤルアネックス201
会費:大人4,300円 / 大学生3,800円 / 中高生:2,500円 / 小学生1,500円 / 未就学児は無料
定員:先着30名
参加方法:こちらのページからチケットをご購入ください。

◎フィールドワーク
日時:2017年10月21日(土)〜10月22日(日)
場所:山形県鶴岡市温海
定員:先着3名
参加方法:こちらのページからチケットをご購入ください。


東北食べる通信

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編集部が東北中を駆け回って惚れ込んだ、農家さん・漁師さんの物語をお届けします。茎付きのサトイモ、殻付きの牡蠣…一緒に届ける食べ物もなるべく自然に近い状態にしています。ぜひ家庭で畑や海の香りを楽しんでください。

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運営責任者:岡本敏男

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