6月17日〜18日に、京都で第13回日本食べる通信リーグ会議運営をやってました。リーグ運営会議は3ヶ月に1度開催していますが、全国各地からご当地食べる通信の編集長が集結します。そして、新たにリーグ加盟を希望する団体がプレゼンテーションし、みんなで審議するのですが、今回は福岡と山梨が新たに仲間に加わり、これで加盟団体は38となります。現在、台湾の4地域で食べる通信創刊の準備が始まっており、韓国や中国にも広がる気配です。
日本列島をスピンアウトし、東アジアに広がる食べる通信ネットワークですが、異業種との連携も始めています。無印良品とは各店舗での生産者イベントや生産地訪問ツアーなどの共同開催を絶賛展開中。今回のリーグ会議には、辻調理師学校の小山伸二さん、JTBの徳政由美子さん、ウィラーの古田秘馬さんにもご登壇いただきましたが、今後、共同戦線を張っていきます。
冒頭の基調講演は京都大学の農業経済学者・藤原辰史先生にご講演いただいたのですが、食べる通信は近代経済学に喧嘩を売る試みだと刺激的なメッセージをもらいました。市場経済の中ではお金というモノサシが絶対だが、そのモノサシでは適正に価値を計れないものがあり、それは「人間・自然・食べ物・人間関係」なんだと。だから今、人間は疲弊し、自然は壊れ、食べ物は荒廃し、人間関係が切れているのだと。食べる通信は物語という新たなモノサシでこれらの価値を適正に計り直そうとしている。未来をよりよくしようとするある種の賭けだが、同じ賭け事でもカジノ資本主義より賭ける価値のある挑戦じゃないか。そんな叱咤激励でした。
日本の村々は1万年かけてつくられてきました。敗戦後もこの村々の土台がゆらぐことはありませんでした。しかしその後、高度経済成長期を経て現在に至るまでの60年で壊滅に追い込まれようとしています。1万年の歴史がたったの60年で息の根を止められようとしている。村々で生きる人々のメンタリティに与えた影響は、敗戦より経済の方がはるかに大きかったと言えるし、言う勇気が今必要だと思います。
1万年の歴史を60年で激変させるインパクトに対し、これまでの思考や手法に頼るだけではあまりにも無力です。「人間・自然・食べ物・人間関係」に値札をつけて価値を計ってきた近代経済学と、「人間・自然・食べ物・人間関係」を値札以外の価値で計り直そうとする新たな経済学との狭間で悩み悶える食べる通信ですが、全国・東アジアの横展開と、異業種との縦展開を組み合わせながら、立体的な動きに変態し、都市と地方の間に立ちはだかる壁を融解・腐敗させていきたいと、今回のリーグ会議で改めて思ったのでした。トランプ政権誕生の衝撃によって、都市と地方の分断がグローバルイシューに浮上しつつある中、その世界的課題の先頭にいるのが日本でもあるので。
日本食べる通信リーグ代表 高橋博之