【読者寄稿】ごまかしがない生き方とは|
中洞牧場・中洞さんトークイベントレポート
(東北食べる通信読者・藤岡聡子さん)


3月の3連休最終日の夕方、中洞牧場の中洞さんのトークイベント開催の1時間も前に着いたわたしは、初めてお会いする東北食べる通信のスタッフのみなさんの様子を眺めていました。

わたしはほんの一口だけでした。空ビンを大切そうに抱える息子です。

自ら頭をガツンと打ちにいこう

東北食べる通信の購読を始めたのは、2014年の6月号「貽貝」岩手県山田町 第八開運丸のみなさん の号からでした。初回から漁師の強烈な哲学、生き方、漁業の置かれた厳しい環境が書かれ、これは“普通の読み物”ではない。日本のこれからについて知るべきものが書かれているのだと、夫と話をしたのとを覚えています。それから、毎号を家族で心待ちにするようになりました。

その頃から生産者さんとのトークイベントに参加したいと思いつつも叶わず、中洞さんがお話しされる日程にはぴたりと都合があい、勝手に運命めいたものを感じました。東北食べる通信2月号の内容から、お二人の話されるであろう内容はおおよそ見当がついていましたが、それでも、お二人にガツンと頭を打ってもらおう!と話を聞きにきたのです。

読むと聞くでは大違い

「自然の中で、自分も生物の一人として謙虚に生きなきゃ」。

マイク越しに聞こえる中洞さん、そして高橋さんの声がどんどんと胸を突いてきます。お二人の話は、聞く人によっては耳の痛い話かもしれません。それはまぎれもなく、わたし自身もそうなのですから。自然に生かされている人間なのに、どんどん自然から離れていく。実は誰もが気付いているのだけど、色んな事情や言い訳、ごまかしをして、知らないふりをしているのかもしれません。

「山がなかったら生きていけないんだから。生きてることの根本を考えなくちゃいけないんだよ」。

中洞さんから東北のある牡蠣漁師の方の話がありました。その方は漁業の傍ら、植林活動されてしていらっしゃるそうです。山は全ての源であるのだから、山を大事にしていかねばならないと中洞さんは言います。

そして、話は生きがいの話へとつながります。

ある老夫婦が、年に決まった季節に中洞牧場の山仕事を手伝いにいらっしゃるそうです。その奥様曰く、「夫は家に居る時は新聞を読んでいるかぐらいしかしていないのに、牧場の季節になると、山仕事に張り切って出かけて行くんですよ」。

山には、誰しもに生きがいがある。じゃぁ、都会で暮らしているひと達の未来に、生きがいはあるのだろうか? 酪農家として自然と命を真正面にすえておいている中洞さんの言葉には、何一つごまかしがないものでした。

ふるさとを持てない世代の務め

母は徳島の農家出身でした。田舎から出てきて団地の中の家を買い、車を買い、家族を育ててくれました。まだわたしの世代までは、母の実家に“ふるさと”として帰ることができます。だけど、わたしたちのこどもはどうなっていくのだろう。高橋さんのよくおっしゃる“ふるさと難民”がわたしのこども世代になっているのです。

そんなことに気付いたとき、真っ先に変えなくてはいけないと思ったのが、食べものの選び方でした。土の中でどんな変化があって野菜になるのか。海でどんな人が何をつかって魚をとっているか。牛乳はどんな牛が何を食べて出してくれるお乳なのか。卵、お肉も同じように。

店で並ぶ前の姿をきちんと想像できるようになるのが、ふるさとを持てない世代のせめてもの務めなのだと、わたしは思います。まずは自分の家族、身の回りから続けていこうと思います。

 

■寄稿 = 藤岡聡子さん

1985年、徳島県生まれ三重県育ち。夜間定時制高校出身。自身の経験から、「人の育ち」「学び直し」「生きて老いる本質」をキーワードに、人材教育会社を経て24才で介護ベンチャー創業メンバーとして住宅型有料老人ホームを立ち上げる。2014年より非営利団体「親の思考が出会う場」KURASOU.代表として、国内外のべ180名以上の親が政治や人権について学び対話する場を運営(東北食べる通信の高橋さんにはスピーカーとして登壇してもらいました)。
2015年デンマークに留学し、幼児教育・高齢者住宅の視察、民主主義形成について国会議員らと意見交換を重ね帰国。同年11月 福祉の再構築をミッションに、株式会社ReDoを起業。2児の母。

 

===東北食べる通信よりお知らせ===

4月1日開催「日本食べる祭り」で中洞さんが基調講演をおこないます。入場無料ですので是非お越しください。

●日時:4月1日(土)10:10〜11:00
●場所:まるごとにっぽん 3階(*アクセス
    東京都台東区浅草2-6-7(浅草駅から徒歩10分)
●詳細:http://taberu.me/topic/matsuri/