平成の参勤交代


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【東北食べる通信2013年12月号/特別座談会《養老孟司×安倍昭恵》】

◉都市と地方をかき混ぜる“平成の参勤交代論”
日本は今、都市も地方もコミュニティが弱り、元気がなくなっています。震災後も続く東京一極集中。しかし今や、東京も地方から流入してきた人々に十分な雇用を創出する力がなくなってしまいました。また、閉鎖的な地方を飛び出て向かった先の都会は個の分断が進み、ある意味で村社会以上に貧困で『生きづらさ』が広がっています。

都市か地方か。これまで私たちは、とかく都市での暮らしと地方での暮らしのどちらが豊かを議論し、二項対立的に両者をとらえてきました。共同体に比重をおく地方社会と、個人に比重をおく都市社会、どちらにも長所と短所があって、そのバランスがうまくとれた社会は、まだ実現されていません。自由競争の社会と競争を避ける社会は本当に相容れない社会なのでしょうか。

私たちNPO東北開墾は、都市と地方を“食”でかき混ぜることによって、まずは都市の個人(消費者)と地方の個人(生産者)をつなぎ、これまでの地縁・血縁を越えた関係性を生み出したいと考えています。その第一歩として、食べもの付きの月刊誌『東北食べる通信』を創刊しました。この先に、都市と地方が結びついた地図上にない新たなコミュニティーを創造していきたいと思っています。

これからの高齢化問題は都市問題です。都市の高齢者がみな病院と介護施設に通い出したら、日本の財政が破綻することは目に見えています。現役時代から地方の生産現場に第二のふるさとを持ち、長期休暇には子どもを連れて、生産者を尋ね、土をいじる。引退後は、地方に移住し、生産活動に参画する。そんな人生を送る人が増えれば、社会のコストは大幅に低減されます。

また、今、東京生まれの東京育ちの若者が増えています。帰省するふるさとがない。それは、将来、首都直下型地震が発生したとき、疎開先がないことを意味します。流通がストップしたら、一日でコンビニ、スーパーの在庫がなくなります。東京には自分たちの力で食べものをつくる力もありません。助け合うコミュニティも脆弱です。今から第二のふるさとをつくっておくことが、いざというときの生存基盤の確保につながります。

さらに、貨幣で他人がつくったものをひたすら消費する都市のライフスタイルに飽き始めている人々も散見されるようになりました。被災地支援に訪れた人の多くが、つくる喜びを感じ、自らの人間性、生きる力を復興していました。被災地でなくとも、地方の生産現場とつながることで、生きる意味ややりがいを喪失した都市の個が、眠りから呼び覚まされることになるでしょう。

一方、地方はとにかく人がいないことがすべての問題の根源なので、定期的にでも訪れる都市住民が増えれば、いろいろな問題を解決する糸口になります。都市が失った貨幣に換算できない価値が地方社会には残っています。が、自分たちの力だけでは存続させることができない。その価値に共鳴した都市住民が、新しい知恵や技術、ネットワーク、資金調達などの面で協力できれば、その価値を協同で守ることができます。被災地が今やっていることはこれです。

都市か地方かの二者択一ではなく、多くの日本人が都市と地方での暮らし両方を持っている社会になれば、双方抱える多くの問題の解決が期待できます。人生のある一定期間、あるいは一年のある一定期間、地方で暮らすための最初のとっかかり(パスポート)を、食べる通信は提供していきたいと考えています。養老孟司さんの言葉を借りれば「社長のゴルフ」を社員みんなができる社会ということになります。

東北食べる通信編集長 高橋博之